浅野弁護士の事件簿

事件No・005「裁判所から競売開始決定が来た」
(記・2005年10月)

ある企業に勤務の方が、「マイホームが競売になる」と競売開始決定通知を持って
相談に、文字どおり駆け込んできた。

数年前から勤務先が営業不振で、年収ベースで100万円以上の収入が減った。
住宅ローンの返済が苦しくなり、金融業者から借り入れて住宅ローンを支払っていた。
当然、借金が雪だるま式に増え、住宅ローンも払えなくなり、新規の借り入れも
出来なくなり、持ち家を売却しようと決心して、近所の不動産屋さんに相談した。
購入希望者が見つかり、抵当権者の銀行と交渉して貰ったが、
どういうわけか話が進まず、突然、裁判所から競売開始決定が送られてきて、
銀行に競売を申立てられたのが解ったとの事であった。

諸般の事情から自己破産の申立以外に無いと判断して、事件を受任し、
競売を申立てた銀行と交渉に入った。

銀行としては、
「ローンの残が3,000万円近くある。
確かに、不動産業者の方が2,000万円で購入希望者がいると言って来た。
市場価格より極端に安いと言うわけではないが、銀行としては2,000万円弁済して
貰っても、残1,000万円が無担保債権として残る。
これの始末が付かないので、競売の方が良いとなった」
との回答でした。

当職としては、
「実は破産申立以外に無いと考えている。
破産宣告、免責で、銀行の無担保債権も無税償却が可能なはずだ」
と任意売却を申し入れました。

その上で、当職が売主代理人として、最初に購入希望者を見つけた不動産業者さんと
専任媒介契約を結び、2,000万円での買付証明を買い主に出して貰い、
競売を取り下げてもらう事を前提に、銀行から抵当権抹消の内諾を取り、
任意売却を進めました。
売買の実行と同時に、任意売却金額から、銀行には契約金額から不動産業者の
仲介手数料、そして、近くの賃貸マンションの契約金、引越費用を出して貰い、
1,890万円を弁済しました。

このようなケースの場合、以前は、不動産会社の方が債権者である銀行と交渉して
競売を取下げて貰い、任意売却するのに弁護士に頼まなくても良かったケースが
多かったと記憶します。
不動産会社が、銀行と直接交渉して処理できた覚えがあるのです。
最近では、銀行がなかなか、これを受け付けないようです。
これは、銀行側が不良債権、特に無担保債権の処理を確実にしたいためでは、
と推察しています。

しかし、任意売却の方が競売となるより、双方に取って遙かに有利である事は
間違いがありません。
先ず、銀行は競売よりも返済して貰える金額が多くなります。
また債務者も、若干ですが、引越費用などを受け取る事が可能な場合があります。

もとより、弁護士は不動産売買の専門家ではありません。
「客付け」と言って、買い主を見つける事は、弁護士だけでは困難です。
また、買い主のローンのアレンジなども出来ません。
これは不動産業関係の方が出来ます。
それでも、頼んでいる不動産屋さんでは、銀行との交渉が進まないと感じたら、
やはり弁護士が間に立つのが、一番良いようです。

その前に、ローンを払えなくなったら、金融機関と相談して、毎月の返済額の減額を
頼む事、絶対に他から借りて返そうと思わない事が、鉄則です
事件簿02「ローンが払えなくなったら払わない」)。

既に、ローンの返済の為に他から借金している場合で、未だ、会社を辞めて
いなければ、給与所得者の民事再生を申し立てる方法があります。
これも、お近くの弁護士に相談するのが良いでしょう。

最悪の場合が破産と言う事になります。
と言っても、破産をしても「デメリットがほとんど無い」のが逆に問題で、
(報徳思想の時にも記載しましたが−−
所感 06 「破産と報徳思想」
余りにも債務者に有利な法律なのではないかと、最近考えてしまいます。
実際、破産を申立てて後悔した当職の依頼人が「一人もいない」と言うのが、
その事実を物語っている様に思えてなりません。

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